3号「生活の知恵」

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 シニアかわら版3号
 シニアかわら版3号(2009年3月)

・姥捨て山伝説にみる三つの「知恵」(1面)

 医療制度「改悪」で怒りの姨捨山一揆の声

   きらっとシニア倶楽部の例会で、本紙のテーマ(「生活の知恵」)について話し合っていたときに、「姨捨山伝説」が話題にのぼった。口減らしのために、ある年齢に達した親を息子が山に捨てに行くという話である。これは長野県の更級の里(現千曲市)に伝わる伝説であるが、近代になって小説『楢山節考』にもなり、映画にもなってよく知られている。
 昨年の春から秋にかけて、75歳を区切りに後期高齢者を対象にした医療保険制度が世紀の悪法だとして、さかんに世論の批判を浴びていた頃、通称で姨捨山といわれている冠着山のふもとの広場で「怒りの姨捨山一揆」と銘打った集会が開かれた。集会で「姨捨山伝説は、お年寄りの大切さを伝えるもの、後期高齢者医療制度はお年寄りを大切にしているとは思えない」ことが確認された。
 「姨捨山伝説」を読み直したら、三つの「知恵」が浮き上がってきた。


 息子を救った第一の知恵
 山に捨てられる身でありながら、暗い夜道を帰る息子のために母親は、道に迷わないように枝を折り道に捨てていた。その心遣いに感動した息子は、母を捨てずに家路につく。道しるべに木の枝を使う知恵が、母を捨てるという非道から息子を救ったのである。


 国を救った第二の知恵
 「灰で縄をないなさい。できなければあなたの国を攻める」という難題が隣の国から突き付けられた。困り果てた支配者が、どうしたらよいかと、おふれを出した。「塩水で浸したわらで縄をなって焼けばよい」と山から連れ帰った母親が知恵をだした。すると難題が解けた。灰でなった縄を支配者に差し出した息子は、その知恵は実は・・・と母親のことを告白した。支配者は年寄りの大切さに気が付き、年寄りを捨てるしきたりが廃止されたという。


 年寄りの大切さ教える第三の知恵
 昔は、食物が少なくて口減らしのために老人を捨てたなどというのは、いかにもありそうな話である。しかし、これは、作り話で、諸外国ではいざ知らず我が国ではそんな風習はなかったというのが定説になりつつある。ではどうして「姨捨山伝説」ができたのか。
 齢を重ねた人間を捨てるというショッキングな内容で興味を引き、大切なことを伝える教訓話に仕立て上げたのが真相らしい。そこに物語作者の大いなる「知恵」を読み取ることができる。現に今、高齢社会を迎えて、各方面の論調の中に「姨捨山伝説」が引用されている。
 ところで、西東京市には現在「いこいの森公園」内に「稗倉」といわれる飢饉対策のための備蓄設備の記念物がある。見ることができるのは、柱を置いた13組の礎石だけだが、奥行き高さともに2㍍、間口27㍍の大きな倉で、12の部屋に分かれ、そこにたくさんの穀物が蓄えられたという。力のある農民が寄り合い、作られた設備だ。「姨捨て」などけっして許さないための「知恵」とみてよい。
      (北原町・Y)

 

 

・「生活の知恵」あれこれ(2面)(3面)

・(トンボのめがね)格別うまかった一杯、(まちの声)「冠水道路」早くなんとかして(4面)

 

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