生前整理

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・片づけ本なぜブーム?

 図書館貸し出し3カ月待ちも(1面)

片づけや整理術の本がブームになっています。きらっとシニア倶楽部の面々が売れ筋の本を手分けして読み、感想を語り合いました。

 

 断捨離に「うなずけない」 

 本の名前にとどまらず、広く使われるようになった「断捨離」(やましたひでこ著、マガジンハウス)。心の執着を手放すためのヨガの行法(断行、捨行、離行)が日常の片づけ術に応用されたものです。 この本が説くところは、ひたすらモノを手放すこと。そうすれば、自分の行動様式が変化し人生が変わる。そして、モノによって封じ込められていた行動力が、モノを取り除くことで本来の自分の生き方が表れてくると言います。 しかし60代男性Aさんは「無駄なモノ、ガラクタがあってこそ潤いと遊びのある、個性的なそれぞれの生活があるといえるのではないか。古くて使い勝手の悪い、使わなくなったモノでも、そのモノに対する追慕の気持ちを大切にしながら一緒に生活したいと思う」と首をかしげます。 この本の前に読んだ「たった1分で人生が変わる片づけの習慣」(小松易著、中経出版)についても、「大勢が雑居する事務所や工場での能率、効率、安全意識と、個人の居宅を同質的にみているのではないか」と納得できないようでした。 「老前整理」(坂岡洋子著、徳間書店)を読んだのは70代男性のCさん。本は「現役さらば=定年」の変化に対応するために、付き合いや生活必需品をひとまず整理するよう勧めています。 リタイアが10年以上前のCさんにとっては「整理した後の生活プランにも踏み込んでいればもっと親切」と物足りなさを感じていました。また、「老前」のタイトルからはどの年代の読者を対象とするのかがわかりにくいと指摘しました。

 

 さっそく実践「いい気分」

 「生前整理」(古堅純子著、宝島社)は、「いわば人生の衣替え」と説き、第二の人生を輝かせるためのスタート。そして、整理とは捨てることではなく、分けることであると言うのです。 70代女性のBさんが目を留めたのは、初めから納戸や押し入れに手をつけようと思わず、まず簡単な場所、例えば引き出し一つからでも始める。時間も1日に10~15分ぐらい。すると整理する快適さが理解される、というくだりでした。「夜のうちに引き出しを三つ整理しました。やってみるといいものですよ」。 このように「片づけ」「整理術」の本といっても、性別や年代によってメッセージの受け止め方はさまざま。捨てるものを選ぶ前に、自分に合った本を選ぶことが先決かもしれません。

 

「無縁社会を助長」の声も 

西東京市内の図書館では同一の片づけ本を13冊買いそろえましたが、予想以上に予約が集中。「順番がくるのは3カ月先」(3月時点)というほどの人気ぶりです。 精神保健福祉士の資格を持つ60代の男性Dさんは、「著者に女性が多いのは、伴侶に先立たれてからモノを整理する苦労や煩わしさを事前に回避したい気持ちが働いているからではないか」と考えます。 ブームについては、「人に迷惑をかけることを全否定する空気が社会に満ちていくのはいかがなものでしょう。孤立や無縁化を助長しかねません」と心配しています。

      (構成=三浦)

 

・  究極の整理の姿は?

 ~老人ホームで聞く~(2面)

・アンケートに見る「整理・片づけ」の意識(2面)

 

・”整理”私はこう思う(3面)

 

・とんぼのめがね(4面)