14号「旅」

画像をクリックすると紙面(PDF)がみれます。

シニアかわら版14号
シニアかわら版14号(2010年6・7月)

      (特別寄稿)

・あなたもすてきな旅を(1面)

 風光る季節になり、どこかへ旅立ちたい思いに駆られる。旅行と旅との違いは、旅行が「家を出ていろいろ行動して帰る」というのに対して、旅とは「さすらい」的なもの、と誰かが言っていたが、感じ方は人それぞれ。「自分の町の、知らない角を曲がった時から旅が始まる」との言葉に頷く方である。 また旅は「未知の世界」への憧れであり、実際にその地に行き、さまざまなものや人に触れ、感じることが大切だと思う。

 

季節の風を感じたり、歴史に触れたりする旅が好きな私は、4月の上旬、ピンク色の桃の花見たさに山梨へ出かけた。三鷹から特急「かいじ」に乗り、立川を過ぎたあたりから雰囲気が変わる。高尾駅を過ぎるとまさしく旅モード。目的地の塩山は山に囲まれた「甲斐の国」である。 駅前から知人に電話して「今、塩山駅です」と伝えると、知人は甲府から車で来てくれるという。 待つ間、駅前の甘草屋敷で開催されていた雛人形展へ行ってみた。住宅事情からコンパクトになったり、雛人形を飾らなくなったりの現代の風潮と違い、信じられないほど豪華な御殿やその中に鎮座した人形たちにびっくり! 無数のつるし雛もため息がでるほどだった。

 

 やがて来てくれた知人と高台にある公園へ行ったものの、霞がかかりピンク色の絨毯のような桃畑を望むことができなかった。せっかく来た私を気の毒に思ってくれたのか、知人は桃の花がきれいに咲いているところへ連れて行ってくれ、遠くの山々を背景に咲き誇る桃の花を見ることができた。 遅めのお昼は笛吹川の畔にある店にした。食べたのはもちろん山梨名物の「ほうとう」。野菜がどっさりと入った太く平たい麺のほうとう鍋に舌鼓を打った私たちなのだった。 帰りは勝沼ぶどう郷駅まで送ってくれた知人に礼を言い、列車の時間まで周辺を散策。駅前に新たに整備された公園は桜の花の真っ盛り。その美しさにしばし呆然の私だった。なんでも甲府盆地の玄関口である勝沼駅周辺を桜の花で埋めようと地元の後継者の会「甚六会」の方々が昭和52年から苗木を育てているという。その功労を讃えて「甚六桜」の名前がついたそうだ。その数、数千本! 公園の名前も「甚六桜公園」で、昔のホームの一部が再現されている。そこにある駅名表示板にはお隣の駅が、「はじかの」になっていてちょっぴり懐かしかった。 旧勝沼駅はスイッチバック式だったので駅構内の線路の延長は2㌔余りと長く、北側の塩山駅寄りに残る折り返し線の敷地にもたくさんの桜が植えられ、毎年4月の満開の時期にはみごとな桜の回廊が出現するとか。桜色の風にのんびりと身を委ねるのも良さそう。

 

 塩山は戦国の世、武田氏がその名を轟かせた地であり、勝沼には幕末の「柏尾の戦い」の跡が残る。桜と桃と春の花々を愛でた今回の旅だったけれど、次は「歴史」を辿るのも良さそうなどと思いつつ、「勝沼や馬子もぶどうを食ひながら」という芭蕉の句に送られて、立川行きの列車に乗り込んだ。

(西東京市在住、フリーライター)


・お出かけあきらめないで。竹馬で夫婦一緒に日本縦断(2面)
・四国お遍路は人生そのもの。歩いてさわって歌で交流(3面)
・トンボのめがね。まちの声(4面)

 

 ☆「竹馬で夫婦一緒に日本縦断」を合成音声で読み上げる

 ☆YouTubeの放送番組をみる